感想「父が消えた」尾辻克彦

本の概要

尾辻克彦氏というのは、芸術家、写真家の赤瀬川原平さんの文学用のペンネームになります。赤瀬川原平さんが亡くなったのが2014年10月、この文庫の奥付を確認すると2005年が文庫の初版、2014年11月が二刷となっており、附属の帯も「追悼 赤瀬川原平 芥川賞受賞の代表作」との記載があります。


調べてみるとこの「父が消えた」の元々の出版は1981年(1980年?)です。帯に書いてある通り表題作で芥川賞を受賞しました。

ちなみにその前の芥川賞の選考でも、赤瀬川原平さんは別作品でノミネートされており、同選考には村上春樹さんも「1973年のピンボール」がノミネートされています。

赤瀬川原平さんは美術家であり作家であり写真家です。私が赤瀬川原平さんを知ったのは雑誌「日本カメラ」なので、写真家の印象が非常に強いです。

赤瀬川原平さんの雑誌連載は、文章が非常に読みやすく、なおかつ面白い文章で、撮影された写真も何気ない町の看板だったり、窓から見た風景だったりするのですが、シンプルでありながら見せる素晴らしい写真でした。そういう経緯があり、書店の文庫コーナーでこの本を見つけ読んでみようと手に取ったわけです。

購入時期・再読回数

この本を買ったのはおそらく2015年か2016年くらいだったと思います。

今回でこの本を読み返すのは3回目くらいですが、表題作の「父が消えた」は何度読んでも素晴らしいと思います。良い小説は最初の一ページ目から非常に高揚する感覚があると私は思っているのですが、「父が消えた」は最初の三行でその高揚感が訪れ、それが最後まで続きます。

あらすじ

父が亡くなり、墓地を見に行くという話なのですが、その道中主人公が同行者と会話したり、父と過ごした過去を回想したりするシーンが挿入されます。そこにあるのは父が亡くなったという事実だけであり、悲しみはあまり感じません。

このとき主人公はどう思って行動しているのか・・・そいったことを考えながら読むと、少しだけ主人公の気持ちに近づけるような気がします。そして最後は普通の世の中だと言って物語は終わります。

感想

他に収録されている作品も魅力的で、面白いですよ。

赤瀬川原平さんの芸術に関しては、私は見たことがありません。機会があれば見てみたいと思いますが、写真と文学には、一瞬を切り取るという共通点がはっきりと存在すると思っています。そういった視点で考えると、文章も写真と同じようにその場を切り取る力というのはそんなに変わらないのかもしれませんね。一見違うように見えても、結構共通点はあるのかもしれません。

赤瀬川原平さんは、私が尊敬する数少ない写真家の一人です。彼が最後に使用したデジタルカメラは、オリンパスのO-MD E-M5でした(雑誌日本カメラで見ました)。私はペンタックスが好きですが、O-MD E-M5には憧れがありますね。もしミラーレスカメラを購入することがあれば、候補になるのは間違いないと思います。

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