感想「月と六ペンス」サマセット・モーム(訳:金原瑞人)

本の概要

この本は1919年にイギリスで刊行され、当時大ベストセラーになった小説です。この金原瑞人さんの新訳は2014年に刊行されました。

今回私が購入した分は2017年の6刷のものになります。

購入時期・再読回数

2018年11月に購入し、今回が初読になります。

あらすじ

主人公は若い作家です。作家の繋がりで縁があり、ストリックランドという男と知り合います。彼は証券取引所で働いていますが、ある日17年連れ添った妻と2人の子供を捨て、イギリスからパリへ向かいます。なぜ彼はパリへ向かったのか?それは彼には画家になるという夢があったからです。

感想

この物語は、基本的に主人公である小説家の視点で話が進みます。彼はできるだけ誠実に、画家になったストリックランドについての文章を書いています。

このストリックランドは自分の今までの生活をすべて捨ててまで、画家という夢を追いました。もちろん、そういった物語の常で、彼が生きている間に名声は得られませんでした。

しかし、彼は後悔をしたのか?と言うと一切後悔はしません。すべて受け入れているんです。自分の信念を最後まで貫き通しました。

この物語の面白さって、ここに集約されています。つまり、文を追いながら画家ストリックランドの人生を追うんですよ、読者も。だから読んでいくうちに、彼の信念や行動に疑問を持たなくなってくるんですよ。

読みはじめのうちは、この男は一体何なのだろう?と思うと思うんですが、そんな思いもいつの間にか消えてしまい、次から次へとページをめくってしまいます。

終盤で、この話の結末はハッピーエンドではないだろうと気が付きますが、それでも最後まで読めるのは、この文章に含まれる「悲しみ」が読者に訴えかけるものがあるからだと思います。

そういったこともあって、読んでいて特に辛かったのも終盤ですね。本当に涙が出る思いでした。ストリックランドの報われなかった人生と、それを全く気に掛けない本人。その2つの思いが、文章から滲み出てきていて、感情に非常に訴えかけてきます。

自分の信念を貫くことは難しく、それを本当にやり通すことはもっと難しい。自分以外のその他全てを犠牲にしなければ、それは出来ません。それでもやり遂げた男がストリックランドという男です。

彼になりたいか?と問われれば「ノー」ですが、彼の貫いたものの一部でも自分の中に取り込められれば、きっと人生は少しは生きたいように生きられるのかな、と思います。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ