感想「東京奇譚集」村上春樹

本の概要

この本は2005年に刊行され、2007年に文庫化された村上春樹さんの短篇集です。5つの短篇が収録されています。

購入時期・再読回数

2007年の初版の文庫を所有しておりますので、購入時期もそのくらいではないかなぁ?

再読回数は5回~6回くらいだと思います。

あらすじ

この本は短篇集なので、次項であらすじと感想を書いていきたいと思います。

感想

気に入っているいくつかの短篇を紹介します。

「偶然の旅人」

序盤に、村上春樹さんのファンにはおなじみの、「スター・クロスト・ラヴァーズ」と、「四時十分前」のエピソードが挿入されています。

この話は、ピアノの調律師をしている41歳の男性が主人公です。この男性が、喫茶店でディッケンズの本を読んでいると、偶然にも同じ本を読んだ女性と知り合いになります。そしてその女性と仲良くなりますが・・・

この話は、この男性の個人的事情と、男性の姉の個人的事情が物語のキーになっています。

それぞれが、どこかで掛け違ってしまったボタンを、元に戻したのが偶然だとしたら、その偶然とはいったいなんだったのでしょうか?この物語はおそらくフィクションだと思いますが、そうではないといわれても信じてしまうようなリアルがあると思います。

「ハナレイ・ベイ」

主人公の女性の息子は、19歳の時にハナレイ湾で鮫に襲われて亡くなってしまいました。

この話は、全体的に悲しみのトーンが満ちていますが、主人公の女性が道中会う日本人の若者二人が良いスパイスになっていて、物語に良い刺激を与えている気がします。

途中、その日本人の若者の一人に、主人公の女性が、「女の子とうまくやる三つの方法」を教えますが、これは割と的確な方法なのでは無いでしょうか?(笑)

「日々移動する腎臓のかたちをした石」

31歳の小説家である淳平は、過去に父親から三人の女性についての説を聞かされます。それが大人になった今でも、その説は彼のなかで意味を持っています。

淳平君は、あるパーティーで一人の女性と知り合い、深い関係になります。そしてその女性に現在書いている短篇の内容を話します。

この話は、「神の子どもたちはみな踊る」に収録されている「蜂蜜パイ」という短篇の主人公と、設定が非常に似通っています。名前も同じですしね。ただ、続編や過去のこととは明記されていいません。

一人の男性が、一人の女性と知り合って、関係を持ち、そして穏やかに終わりを迎えるまでが、綺麗に物語になっています。その合間合間に、淳平君の書いている短篇小説が入ってきており、二つの物語を一つにしたような印象を受けます。

最後に淳平君はこの女性との出来事をきちんと受け入れて、一つの段階を乗り越えます。こうやって、人はきっと成長出来るのだと思うと、救われる思いでいっぱいになると思います。

「どこであれそれが見つかりそうな場所で」

「品川猿」

どちらもかなり不思議な話ですが、この短篇集においてはその不思議さはあまり感じないのではないかな、と思います。おそらくこの短篇集を覆っているテーマみたいなものが、その不思議さを中和しているからだと私は考えています。

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