感想「誰にも書ける一冊の本」荻原浩

本の概要

この本は2011年に刊行され、2013年9月に文庫が発行されています。

購入時期・再読回数

私が書店で購入したのは2016年くらいで、初版でした。

再読回数は今回で3回目ですね。

あらすじ

会社帰りの1時間弱の電車で全て読み終わるくらい短い物語ですが、読み終わった後にこみ上げてくる感情は決して短くはありません。いや、それどころか長く続くかもしれません。

主人公は小さな会社を経営している離婚経験のある男で、父親の容態が良くないという連絡を母親からもらうところから物語は始まります。主人公は会社を経営しながら小説を書いており、過去に新人賞を受賞しましたが三冊目を出版するという話はどこの出版社からも来ていません。

主人公の父親は、自分の物語を書き残しており、それを息子である主人公に、母親が渡すところからこの物語は本格的に動き出します。

感想

もし、自分が同じ状況になったとしたら、と考えることが出来るのが、小説の良いところです。想像力ですね。実際には、私は会社を経営している訳ではないし、新人賞に応募しても一次選考も通りません(笑)。それに私の父親は、おそらく自分の人生を一冊の本にするようなことはしないでしょう。

だからこそ、想像出来る物語が、私は好きなんです。この主人公の父親のように、波瀾万丈な人生を主人公は送っていません。しかし、父親の物語を読んで、主人公も父親の人生をなぞるんですね。

この本を読んでいると、自分も主人公に同化します。そういうことはこの本に限らずいくつもありますが、この本は主人公だけでは無く主人公の父親にも同じ感情を抱きます。主人公の目を通して、主人公の父親の人生を追体験します。

分かりにくいかもしれませんが、本を読んでいる私が、主人公と、その父親の両方を理解できるというか・・・

人生のターニングポイントになっているいくつかの出来事を、まるで自分の体験のように感じることができます。物語は途中で大きな転換がありますが、主人公の気持ちは大きな舵切ることは無く淡々と話が続きます。

物語の根本を流れる一本の芯は、悲しみよりも喜びの方が強いかもしれません。それは荻原浩さんの長編小説に共通するものです。荻原浩さんの小説は、決して明るくはない話でも、希望を捨てると言うことは絶対にありません。それらの小説を読み終わると、不思議と明日もやってみよう、と思うことが多いのです。だから私は荻原浩さんの小説が大好きなんです。

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